海外理工系大学院のマスターコースはどう選ぶ?MSc or MPhil?
海外理工系大学院マスターコースのMScとMPhilについて
MScかMPhilか、考える前にまずはこの二つのマスターコースについてある程度理解しておきましょう!
先日、香港科技大学工学院の留学を検討している学生からマスターコースについての相談がありました。MScとMPhilはどう選ぶという悩みだったが、詳細を伺うとこの二つのコースについてちょっと学生が勘違いしているところがあるかもしれないと感じました。
MSc = Master of Science
MPhil = Master of Philosophy (in 様々な分野、哲学分野のマスターという意味ではありません)
名前だけからみるとMScのほうが理工系っぽくてカッコイイと思われるかもしれないが、実際に留学経験をもつ私たちからみると、コースの名前がそんなに大事ではないと思いました。重要なのはコース目的と狙い、単位取得、学費、給付型奨学金・学費免除、指導教員探し、合格難易度における相違です。そして自分のキャリア設計に将来どのような仕事に就きたいという点も大事です。
以下、香港科技大学工学院のMScとMPhilを例にその違いをまとめてみました。
これをみるとおそらく多くの学生は最初に注目したのが給付型奨学金の差かもしれません。そうですね、研究型のMPhilのほうがだいぶ給付型奨学金の額が高いです。その理由は後ほど説明します。
MScとMPhilは最初からターゲットが異なるように設定されています。
MScは専門知識の学びと資格取得を目標としている学生にターゲットしたコースです。あるテーマに関する研究というよりは、ある分野において幅広く学び、グループでのコースワークを経て最終的にレポートを提出するような感じです。そのため、知識の習得とともに人脈作りも期待できると言われています。また、Full-timeだけでなくPart-timeも可能だし、自分のペースに合わせて途中休学することもできます。キャリアアップには良いコースかもしれません。
MPhilは将来研究者になりたい・研究職に就きたい学生向けのコースです。研究遂行のためにもちろん専門知識の習得が必要だが、知識の勉強よりは研究って何?を理解することに焦点を当てた内容となります。研究のマインドセットとプロセスを理解するには研究の経験が豊富な教員から指導を受けることが大事です。最近出願の前に指導教員探しが不要という専攻もあるが、私たちの経験からいうと、指導教員探しが必要かつ重要です。とくに給付型奨学金申請に指導教員の推薦や大学の推薦が必須とされているものが多いので、指導教員の協力が重要なポイントとなります。出願の前に教員について十分に調査し、気に入った教員とコンタクトをとって様々なコミュニケーションをしておくことがおすすめです。お気に入りの先生が自分のことを認めてくれて協力してもらえると、合格も給付型奨学金獲得もその可能性がだいぶ高まります。
MSc or MPhil 選ぶにあたってのアドバイス
MScかMPhilか、私たちの経験をもとにアドバイスを提供させていただきます。
自分のキャリアを見据えて検討
まず自分のキャリアについてイメージしてみたら良いかもしれません。まだ社会人になっていない学生の場合は、将来どういう仕事に就きたいか、調査したり先輩に聞いたりインターンに参加したりして、ある程度イメージを掴んでおきましょう。もっぱら研究するより高度な専門知識を活かす専門職なら、MScのほうがおすすめです。一方、研究中心の仕事をしたいと強く思ったら、MPhilは良い入口でしょう。
すでに社会人になっている学生なら、同じ分野でキャリアアップを図りたいかそれとも分野をシフトしたいか、これが検討にあたっての重要なポイントになるでしょう。分野変更だったらMScがおすすめです。ただし、例えば元々物理の専攻だが職場で十分にIT知識と実務経験を積んだら、MPhilも可能かもしれません。Case by caseなので、お気に入りの先生と相談しておくと良いと思います。
自分の適性を大切に
自分の好きな分野、合格の難易度、給付型奨学金獲得の易しさなどの要素を優先に考えて自分の適性を忘れた学生は、以前会ったことがあります。MPhilコースの最中だが研究するよりはいろいろと勉強したいなと思った人、MScの2年目になったにもかかわらずやっぱり自分なりの研究成果を発表したいという強い思いを抱えた人、クラスには数人がいました。そのタイミングではなかなかコースを変更することが難しいので、かなり悩んでいたそうです。MScかMPhilかの検討にあたって、勉強と研究のどちらに向いているか、自分の適性を予め理解し大切にしましょう。
経済的なサポートが自分にとってものすごく重要と思ったら
たぶんほとんどの学生にとって海外進学には経済的な要素が重要です。学費、学費免除制度、給付型奨学金獲得などを考えれば、MPhilが有利です。MScと比べてMPhilが学費が少ないし給付型奨学金も潤沢です。先日開催された香港科技大学工学院マスターコースのZoom説明会によると、留学生の場合はMPhilに合格すれば、ほぼ100%年間380万円の給付型奨学金がもらえるそうです。つまり、MPhil入学が決まれば、日本人学生にとって経済的なサポートが付くということです。香港科技大学の奨学金はすべて給付型なので、返済義務付きの多くの日本国内奨学金とは異なります。もしMScかMPhilのどちらにもこだわらず、将来について専門職でも研究職でもOKと思ったら、経済的サポートの面から検討するのも良いかもしれません。
私たちの実際の経験からいうと、確かに経済的な困難に直面したら勉強も研究もできなくなります。とくに香港科技大学のような高いレベルの大学では、勉強も研究もかなりハードとなり、あまり慣れていない香港でバイトをするのも現実的に難しいため、経済的なサポートがとても重要に思いました。
ちなみに、なぜMPhilのほうがこんなに恵まれているの?と聞かれると、観察と経験でわかった一つの理由は、学生がMPhilを通じて大学の研究活動に貢献することになるからです。MPhilは研究中心の内容なので、学びの一環として学生は自分のテーマに関する研究をすると同時に、所属する研究室・研究グループのプロジェクトにも参加し研究を分担します。研究成果を収めるにあたって学生が力を出しています。ところが、MScは専門知識の習得が中心となるので、大学全体の研究活動における貢献度がMPhilと比べてだいぶ低いです。おそらくこの違いで給付型奨学金もかなり異なるでしょう。
最後に
以上MScとMPhilの選択について、私たちの経験をもとに両者の違いをまとめてアドバイスを提供させていただきました。留学は人生が変わるほどの大事なステップなので、十分に情報収集して慎重に検討しましょう。
ところで、修業年限においてMScとMPhilは結構異なります。パートタイムや休学などに対応するMScがより自由だが、ローカル学生ではなく留学生としていくなら、短期間に集中し修了させることがおすすめです。そういう観点からみると、MScとMPhilの差はあまりないかなと思いました。もしローカルで仕事しながらマスターを取得したいと思ったら、MScはマイペースに向いていますね。
日本の大学院ではMScとMPhilという区別があまりはっきりとされていないし(最近ではMScに近い専門職大学院コースが設置されはじめたが)、大学によって修士課程が二種類に分けられていないこともあります。今回のブログで皆さんの参考になれば、うれしく思います。
是非頑張ってください!
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