就職活動について(在学院生のインタビュー)

就職活動に関してインタビュー取材を行った理由
就職活動は、本グループへの留学相談のなかでよく聞かれた内容です。まずはタイミングのほうですが、海外多くの大学は秋入学になっており、卒業が夏のあたりになります(5月〜6月)。一方、日本多くの企業は4月入社が一般的になっているので、タイミングが合わないことに留学検討中の学生が心配しているようです。また、海外に滞在することで国内の面接に参加できないことも懸念されています。
従って、香港科技大学留学中ながら国内のIT企業の内定をもらった院生に、就職活動についてインタビュー取材を行いました。皆さんの参考になればと思います。
香港科技大学留学中の日本人学生にインタビューした内容
都筑さん→T
香港科技大学工学院 日本人留学支援グループ→G
G:都筑さん、こんにちは。本日インタビューの機会をいただき、ありがとうございます。香港科技大学を無事に卒業し、しかも日本での内定もすでに決まったとお聞きしました。おめでとうございます! 取材のスタートとして、まず簡単に自己紹介をお願いします。
T:はい、ありがとうございます。都筑草太郎(つづきそうたろう)と申します。香港科技大學商學院 Master of Science in Information Systems Management(MScISM)に2024年8月〜2025年7月まで通っておりました。現在は日系IT企業から無事内定をいただきまして、2026年4月よりソフトウェアエンジニアとして働いていく予定です。
学士は青山学院大学法学部に在籍しておりましたが、大学院を機に思い切って理転してMScISMへと入学した、という経緯でございます。
G:都筑さんとは以前ご縁があって、香港科技大学留学のサポートをさせていただきました。都筑さんが無事理転し、更にエンジニアの仕事に就くことを知って、私たちサポート側としてもたいへん嬉しく思います。元々法学部出身のようですが、法学関係ではなく工学系のエンジニアになりたい、と考えるに至った経緯を伺ってもよろしいでしょうか。
T:そもそも青学法学部に入ったのも高い志があったわけではなく、受かる見込みのある大学を併願で受験して、合格した大学の中で一番評判が良かったところに入っただけでした(笑)。進路選択という意味ではあまり良い手段ではなかったと思うのですが、一浪していたので後が無く、こういう立ち回りをしていました。いざ入学してみたものの法学の世界にはそこまで熱を持って取り組めなくて、就活然り自分の進路に悩んでいました。
そんな時に、たまたま履修した他学部の統計分析の授業がとても面白かったんです。先生の説明が上手で、データ分析とかData Scienceの分野ってこんなに面白いんだって思うようになって、当時交換留学帰りの4年生だったんですけど、自分でPythonとか統計とか色々勉強するようになりました。最終的にはそれが転じて、海外の大学院で理転したいという考えにまでなった、という感じですね。
G:なるほど。ではなぜ香港科技大学を考えましたか。どこに魅力を感じましたか。
T:元々私は大学3~4年生の頃にスウェーデンに交換留学していたのですが、食文化とか色々身体に合わなかったんですね(笑)。それで次留学するなら漠然とアジア圏がいいだろうと思っていました。そんな中インターネットで色々情報収集している時に、香港科技大学に関する情報を、日本人留学生支援会を通じて知ったんです。他の大学院に比べて出願に際して色々アドバイスもらえそうだったし、世界ランキング等の評判も良かったのでこの大学院を主軸に出願を進めていこうと、決断したという感じになります。
G:香港科技大学では主に何を学びましたか。
T:私が所属していたプログラムは商學院のInformation Systems Managementという名前で、主にITマネジメントに関するプログラムでした。所属母体の「商學院」というのもいわゆるビジネススクールなので、ビジネススクール内にあるIT系の修士プログラムって感じです。なので、工學院(工学部)所属のプログラムと比べてそこまでガッツリ理論とか数式とかは出てこず、体系的なITマネジメントに関わる知識を勉強するようなプログラムでした。又、私のようにエンジニアになる子は少なく、どちらかというとコンサルやビジネス職を目指すような子が多かった印象です。
G:香港科技大学をきっかけに専門を変更するにあたり、今ふりかえって一番大変だったと思うことはなんでしょうか。自分はいかに克服しましたか。
T:何より大変だったのは、周りと全く異なることをやらなければならなかったことですね。理転を志したのは4年生の秋学期ごろだったんですけど、まわりの同級生は皆、就活を終えて卒業旅行を楽しんでいる人か、日本の大学院に進学する人か、まだ内定がもらえず就活を続けている人かしかいませんでした。香港にある大学院に、しかも理転するような人間なんて一人もいないんで、自分で色々考えて対策等練らなきゃいけなくて、孤独と不安で結構大変でしたね(笑)。
それが少し和らいだのは、一つは留学生支援会のKenさんに色々相談できたことがあると思います。もう一つは、僕Studyplusっていう勉強の記録をするSNSをやってたんですけど、そのアプリの中で同じように海外の大学院を目指している人や、理転を目指している人と相互フォローになったんですね。顔も知らないし話したこともないけど、日本のどこかで同じような目標を掲げて頑張っているんだと思うと不思議と自分も頑張れた、というのもあると思います。
G: そうですか。確かに専門を変更することは容易ではないし実際に踏み出す人が少ないので、その孤独と不安はとても理解しています。心の支えを見つけることがたいへん重要なので、よくやりましたね。不安といえば、結構多くの留学検討中の学生が就職について心配しているようです。本グループへのお問い合わせにも、就職活動に関する質問が多かったです。都筑さんは実際に経験したので、できればいろいろと教えていただきたいと思います。まずタイミングのほうですが、海外多くの大学は秋入学になっていて、卒業は夏の前にあります(5月〜6月)。一方、日本多くの企業は4月入社のため、就職活動といえば、その一年前に始まるのが一般的です。都筑さんの場合、いつから就職活動を始めましたか。あるいは、どのように自分の就職活動を計画しましたか。
T:そうですね。まず僕は香港・中国の企業は全く選択肢に入れていなかったので、オンラインで日本の企業にエントリーする前提で色々動いていました。就活の時期が毎年早巻きになっているという話は知っていたので、その流れに乗り遅れないようにこまめに企業の採用ページをチェックしていました。2025年7月卒業だと仮定して日本の企業に就職するとなると、2026年4月(26卒)の扱いになるので、その募集をしている企業に2024年9月ごろから既にESを提出し始めていました。そして大体10~11月くらいからコーディングテスト・面接が始まり、私の場合は2025年1月下旬で第一志望の企業に内定を頂けて就活終了、という流れでしたね。
なので振り返ってみると、入社の1年以上前の段階で内定をいただいたので、相当早く就活が進んでいったということになります。目指す業界や職種によって若干の差はあると思いますが、これから科技大を検討されている方は1年前と言わず1年半ほど逆算して色々準備を進めていく必要があると思います。
G:細かく教えてくださって、ありがとうございます。ちなみに、今回の就活において都筑さんの狙いはIT系の企業だったと思いますが、学部のとき法学部だったことは、何かのマイナスを感じましたか。
T:肩書きとしてはマイナスよりもむしろプラスに転じていた場面の方が多かったように感じますね。4年生の頃に法学部から理転をした人間なんてなかなかいないので、周りに流されずに自分で決めたことを遂行する能力みたいなのはむしろアピールしやすかったです。
一方で、他の理工学部・情報学部から修士に進学した学生と比べると専門性や経験の点で劣勢に立たされる場面は正直ありました。即戦力を採りたい企業とかでは特に歯が立たなかったかな…と感じております。しかし、私が内定した企業は割とこれからの成長性に期待してくれる空気感だったので、それが僕の海外理転の経歴とうまくハマって高く評価していただけたのかなと、思っていますね。
G:なるほど、困難に向き合って努力していたことが評価されたんですね。その面をしっかりとみてくれる企業についても、よく企業探しで見つけましたね。これはとても大事と思います。ところで、海外留学経験があること、そして修士学位が海外で取得することは、就活においてプラスになりましたか。
T:そうですね…。これが結構難しいんですけど「留学経験」や「海外修士」という要素自体が有利に働いたとは正直あまり思いません。せいぜい、面接のつかみとして面接官の方がとっつきやすい経歴というだけであって、その後の面接の内容には大きく影響していなかったように思います。「海外修士」に関しても理系の半数以上は院卒なので、修士課程自体そこまで珍しいものでもないんですよね。
ちょっと話が逸れちゃうんですけど、学士3~4年の頃に交換留学へ行っていた頃の周りの日本人交換留学生を思い返すと、特段「留学経験」が最強の切り札のように就活で生かされている子をほとんどいませんでした。もちろん、超難関の外資とか大手に内定もらっている子もいましたが、その子らは留学の有無に関わらずポテンシャルの高い子たちでした。
反対に、留学経験あるんだけど就活に難航する子や就職浪人する子、志望度があまり高くない企業に入ってすぐ辞めた子等々、その進路は留学経験のない一般の就活生と同様に千差万別です。
つまり、「留学経験」や「海外修士」といった肩書きそのものは就活においてほぼ無意味であり、実際に何を経験したのかとか、どんなことをやりたいのかといった中身の方が100倍重要だと思います。
G:それはこちらも共感しています。確かに肩書きをみる企業もあると思いますが、肩書きだけでなくそれができるまでの歩み、経験、努力などがより重視される点が、学生の皆さんもしっかりと理解することが大事ですね。では、香港科技大学留学の経験と学位も、就活のときそのように捉えれましたか。
T:先ほどの話の延長になるんですけど、そこまで「経験」や「学位」が役に立ってはいないと思います。僕のプログラムはビジネススクール所属だったのでそこまで専門性の高い内容は勉強しませんでした。寧ろプログラミングの経験が無い学生向けに構成されたカリキュラムだったとさえ感じるほどなので、大学院の授業よりも自分で参考書買って自主学習していた時の方がよっぽど身になっていたと思います。
学位に関しても同様ですね。先ほども述べた通り、理系の学生の多くは大学院に進むので、ことさら「香港科技大學修士課程修了」という肩書が他のそれと比べて強力な力を持っていたとは感じませんでした。
G:本グループへの留学相談から、結構多くの学生が就活について不安を抱えているように感じています。タイミングはその一つで、もう一つは評価のほうです。例えば、海外留学の経験が本当にプラスになるか、香港科技大学はアジアTOPクラスとはいえ、日本での知名度はまだまだ少ない、企業が本当に向こうで取った学位を評価してくれるのか、というところですね。さらに、多くの学生にとって留学とは欧米留学というイメージで、香港留学ってありですかみたいな質問もありましたね。極端な場合、欧米以外の留学は役立たずという考えもあるように感じました。これらの不安や疑問に対して、都筑さんから何かアドバイスをいただけないでしょうか。
T:「マイナスになることは無いにしても、プラスに転じるかは自分次第」というのが全てだと思います。日本では科技大の知名度が低いのはその通りだと思います。しかし、だからといってその大学・大学院に通う学生が正当に評価されない、知名度のある日本の大学の方が良い扱いを受けるというのは誤りだと思います。知名度が低い大学であろうとなかろうと、面接官は基本的に話す内容重視で判断しております。なので、科技大に通っているからといって理不尽な扱いを受けることはありませんし、反対に特別待遇のようなものを受けることも無いです。
ESの書き方から、どのように自分の経験をアピールするのか、どのように自分の強みを相手に理解してもらうのか、そうしたソフトスキルの工夫が皆さんの就活においてはとても重要になります。今はMatcherをはじめとした就活相談アプリがあります。地理的にどうしても日本から離れてしまうので、そうしたツールを駆使しながら面接の場数を踏んだりESの添削を繰り返すことがとても重要です。
ただもう一つ、間違いなくやっておいた方が良いのは、「授業型」修士プログラムに関する説明を丁寧に話すことです。MScISMのような授業型修士プログラムは日本には基本存在しません。なので、自己紹介で「〜〜大学大学院からまいりました、〇〇と申します。」と言うだけだと、面接官はほぼ確実に研究内容を深堀りしようとしてきます。深掘りの質問が振られてから、授業型修士プログラムには、修論も具体的な研究内容も存在しない旨を伝えると印象が悪くなるので、必ず自己紹介の段階で、多少時間を使ってでも授業型修士について軽く説明をするのは必要だと思います。
G:質問は以上になります。都筑さん、本日は長時間に渡りインタビューに答えてくださり、ありがとうございました。このインタビューは本グループのサイトに掲載させていただきますので、留学を考えている多くの学生の参考になるかと思います。都筑さんも、これからソフトウェアエンジニアとして良いキャリアを歩んでいけることをスタッフ一同願っております!
本グループについて
私たちは香港科技大学工学院の正式後援を受けている日本人留学支援グループです。
メンバーには香港科技大学留学中(とくに工学院)の日本人学生、香港科技大学の留学を修了した日本人OB/OG、日本の国立大学で国際交流・留学サポートを担当している香港出身の先輩、そして日本人学生を応援したい留学生がいます。
香港科技大学工学院(大学院工学研究科)留学担当スタッフと連携しながら、給付型奨学金・修士博士コース・研究動向・キャリアアップなどの情報を集めてアップしています。
↓香港科技大学工学院日本人留学特別支援サイト
https://hkustengineeringjp.org/
科技大在学中の学生やOB/OGとの交流ができるように、Zoom留学交流会も開催します。本サイトのブログとともに、SNSで発信していますので、最新情報をご希望の場合、是非フォローをお願いいたします。
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