香港科技大学工学院マスターコース1年生の君島さんにインタビューしました。
中国に長く居住し大学学部から香港に住んでいる経験があるので、科技大のマスター留学だけでなく、給付型奨学金申請のコツ、中国についてリアルな体験を語ってくれました。
以下インタビューの内容です。是非ご参考ください。
Kimishima san→K
Staff→S
S:君島さん、こんにちは。今回インタビューを受けていただいて、ありがとうございます。香港科技大学工学院(以下SENG)在籍している日本人留学生の一人ですが、中国には結構長く滞在していると聞きました。よかったら、簡単な自己紹介から、まず経歴について少し教えてください。
K:こんにちは。香港科技大学機械工学修士一年の君島広海です。一応日本で生まれましたが、幼いころから高校卒業まで中国上海市、その後大学学部から香港に住んでいます。上海ではインターナショナルスクールに通っていたので、学校では英語と中国語を使い、日本語は家と日本人の友人と使う程度でした。こういう環境で育ったため、中華圏には住み慣れていて、むしろ日本より馴染みあるぐらいです。
S:長く中国に滞在して、自分なりに一番インパクトを受けたのはどういうところですか。あるいは一番印象に残ったのは、どういう面のことでしょうか。
K:そうですね、自分の中ではやはり中国のインフラの発展速度が印象に残ります。特に印象深かったのが鉄道網の充実で、例えば2010年の上海万博前に地下鉄路線が5本ぐらい相次いで開業したことや、中国国内の高速鉄道が恐ろしい建設速度で作られて、昔寝台電車で行っていた距離が数時間で結ばれたことです。
S:なるほど、そういうところですね。世界2番目大きい経済規模をもつ中国は、最近すごい勢いで成長しているように感じます。とくに技術の面では、5G・AI・ビッグデータ処理・電気自動車・自動運転など、一つ一つの分野で技術の発展を収めるというよりは、国規模でこれらの新技術の実用に大きく力を注いでいるようです。電子決済の発展が個人的に一番驚きましたが。君島さんも技術の面で中国の変化を強く感じましたか。自分にとってはどういう面の技術発展に興味ありますか。やはり専門の機械工学の分野でしょうか。
K:はい、最近だと中国の技術面での発展が目立ちますね。個人的にはAIやビッグデータ処理の分野に関わりがあまりなくて、印象が強くないですが、周りでこの分野を研究している人は多いので注目すべき分野だとは思います。自分はそれよりは自動運転や自動車のエネルギー問題の方が興味あります。
S:ちなみに、海外留学といえば、多くの日本人学生にとって欧米留学(とくにアメリカ)のイメージが一番強いようです。専門知識の学びはもちろんのこと、英語力強化、そして将来の就職も、欧米留学が基本と思われているように感じます。君島さんが欧米ではなく中国地域を選んだ主な理由は何でしょうか。中国の技術発展以外に、何か魅力を感じたところがありますか。
K: そうですね、最初は自分も欧米の大学を考えていたのですが、正直に言えば自分の成績に自信がなく、欧米のトップ大学に受かるのが厳しく、欧米で下の位の大学か香港の大学で選ぶ段階で香港にした感じです。一応大学ランキング等では香港の大学の方が上位で、自分にとっては中華圏にある香港の方が馴染みやすいと思い、決断した感じです。なので個人的には、すでに中国にいたことが大きかったと思います。
S:中国のことを学びたいと思ったら、中国へ行けばというイメージが一般的ですが、敢えて香港を選んだ理由は何でしょうか。
K:高校卒業前には、幼いころからずっと住んでいた上海ではなく、ほかの都市に行ってみたいと思っていました。その延長で、最初は中国国内ではなく、日本でもなくどこか違う場所に住んでみたいという思いがあり、欧米を考えましたが、先述の通り香港に決断しました。香港に行けば、中国を違う目線から見れるいい機会だと思い、かつ文化圏が似ていて馴染みやすいかと思いました。
S:最後に香港科技大学工学院にたどり着いたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。
K:最初は友達から話を聞いて、香港科技大学を知りました。それで高校卒業前に申請する大学のリストに入れた感じです。学部から修士に上がる時は、すでに大学に在籍していて、教授と面識があったことと奨学金制度の存在が決め手でした。
S:やはり給付型奨学金が一つの大きいな理由でしょうか。
K:そうですね。海外の大学で博士号を取ろうとすると給付型奨学金が充実している大学が多いですが、修士で十分な奨学金を貰える学校は比較的少ないと思います。その点では、香港科技大学は博士・修士共に給付型奨学金を取りやすいと思います。
S:君島さんは今年、留学生向けの給付型奨学金の一つ、AFLSPに採択されたと聞きましたが、よかったら少しコツをシェアしていただきたいと思います。
K:まずは給付型奨学金の内容をしっかり確認することだと思います。給付型奨学金の種類によって期限や申請内容が違い(例えばAFLSPだと期限がPGS(別の給付型奨学金)より早い)、今年のAFLSPの願書にはエッセイ形式の質問二問と3分間の自己紹介・意見交換をするビデオを撮り提出するという内容も含まれていて、多少は余裕を持って準備するのがいいと思います。
S:そういう留意点がありますね。大学院進学において、日本はまだ返済義務のある「奨学金」が主流のようですが、返済義務のない給付型奨学金がとても学生にとって大事と思います。とくに言葉・文化・社会システムなどで異なる外国へ留学する場合、経済的に安定することから、大学の学びに集中できますね。
K:そうだと思います。大学院生はただでさえ学業でストレスを抱える上に、経済的にも不安があるとかなりプレッシャーがかかると思います。あと海外だと日本より物価が高いこともあるので、給付型奨学金があるのは非常に心強いです。
S:2020年はいろんな大きな出来事があった年ですが、とくにコロナの影響は、世界全体に衝撃をもたらしています。留学しないほうがいいよと、今私が支援している学生たちが、周りからそう言われています。君島さんの場合、帰国せずに留学を続けていますが、自分としてはコロナによる影響についてどう考えていますか。
K:感染対策の面で言えば、完璧ではないものの、香港は日本より良い対応を取っていると考えています。ただ、海外で病気や怪我をすると医療システムを熟知していない不慣れな土地で病院に行ったり治療してもらったりするのは大変です(*注)。特にコロナにかかると相当大変な状況におかれると思われるので、感染対策をしっかりすることを心掛けています。
(*注)自分は一回香港で怪我をしていて、2日間入院したのですが、幸い軽症ですぐ退院できました。大学側が用意した保険に強制的に加入させられるので、治療費等全額帰って来ましたが、香港にのみならず海外留学するかたには保険などしっかり確認することをお勧めします。
S:科技大の場合は、コロナ影響のもとでどのような対策をとっていますか。学生視点からで結構なので、少し現状を教えていただければと思います。
K:科技大では今、授業はすべてオンラインで行っており、香港での感染が落ち着いている時は教室とオンラインのミックスモードで行っています。香港にいない生徒や学校に来たくない生徒は来る必要のないように試験内容や成績を調整しています。
S:なるほど。いただいた情報を、ほかの留学を検討中の学生たちにもシェアさせていただきます。
S:ほかの科技大在学中の学生から聞いた話ですが、就職について科技大から結構多くのメールが届いていると。就職セミナー、OB/OGの経験シェア、インターンシッププログラム、キャリアに関する研修、企業主催のオンラインイベントなど、様々な内容のものが送られているそうです。留学生のほうにも、同じように就職関連のメールが届いていますか。
K:はい、定期的に就職情報のメールは届きます。しかし、企業によっては留学生を採用しない所や、広東語/普通語を必要とする所もありますし、条件がはっきりしていない時もあります。今年はコロナでイベントがかなり減りましたが、通常なら就活フェアやセミナーを開催しています。基本的に就職情報はメールか専用サイトに載っていて、探すのは難しくないと思います。
S:君島さん自身は、キャリアや就職について、どうお考えでしょうか。
K:自分は特にどこで仕事したいとかは無く、香港でも日本でもそれ以外の国や地域でも就職できるとこ、興味があることがあればと思っています。
S:ありがとうございます。ほかの学生にも良い参考になると思います。最後に、留学といえば、結構多くの学生たちが英語と文化の違いについて不安を抱えています。日本語がまったく通じない国に渡って数年間生活すること、自分にとって本当に大丈夫かと。君島さんはどう克服するか、またご経験から、有意義な留学ができるように、留学検討中の学生向けに少しアドバイスをいただければうれしいです。
K:個人的に言えることは、自信をもって英語でも他言語でも話すことです。よくミスもするし、恥ずかしいですが、それが上達する道のりにあると思っています。自分は香港に最初来た時、広東語を全くできず、英語がそこそこ通じる香港でそんなに頑張って広東語を覚える気もなく、恥ずかしいから広東語を使うのを控えていたら、数年経った今でも超初心者で酷い様です。本当に意義がある留学をしたいなら、言語や文化から逃げるのではなく、恥をかきつつも立ち向かうべきだと思います。
S:丁寧にいろいろと教えてくださって、どうもありがとうございます。たいへん参考になりました。君島さんが科技大留学を機会に良いキャリアのスタートができること、心から願っています。
香港科技大学のマスター留学について、詳細は下記の情報をご参照ください。
公式英語サイト
MPhil/PhD
https://seng.ust.hk/academics/research-postgraduate/mphil-phd-programs
MSc
https://seng.ust.hk/academics/taught-postgraduate
日本語支援サイト
https://hkustengineeringjp.org/hkust-seng-degree-programs/
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