科技大での博士課程の学習が実際にどういう感じか、Doctorコース一年生データ可視化専攻の執行さんに聞いてみました。
執行さんは元国際文化学の情報コミュニケーション専攻で、どちらと言えば学部と修士の時は「文系」(正確には文理融合のコース)ですが、科技大留学は工学分野を選びました。その歩みも参考になるかもしれません。

Kento→K

支援グループ→S

S:執行さん、こんにちは。今回インタビューを受けていただいて、ありがとうございます。科技大留学を検討している学生たちから、海外の大学での勉強は日本とどう違うの?という質問がありました。今まではMasterコース在籍の日本人学生に取材しましたが、Doctorコースの学生は初めてですね。いろいろとお聞きしたいと思います。執行さんへのインタビューは初めてなので、よかったら簡単な自己紹介からスタートしましょう。

K:執行と申します。2020年の9月から香港科技大学のDepartment of Computer Science and Engineeringに博士課程の学生として入学しました。どうぞよろしくお願いします。

S:ありがとうございます。専攻については、執行さんは元神戸大学国際文化学研究科に在籍したと伺いましたが、今は工学とくにデータ可視化を専攻しているようですね。専攻内容をチェンジした理由は、やはり将来自分のキャリアと密接に関係ありますか。

K: 将来のキャリアについてはまだ明確に描けていないのですが,何か専門的なスキルを身につけてプロフェッショナルとして仕事がしたいと考えてきました.今の専攻で学んでいることが,今後のキャリアと関わってくる可能性は十分にあると思います.

S:科技大に入る前には、すでにデータ分析や可視化の学びと研究をスタートしましたか。

K:元々いた研究科には情報系のコースがあり,そこで授業と独学を通してコンピューターサイエンス全般について学んでいました.データ分析や可視化には入学以前から興味があったので,関連するプログラミングやツールの使い方は学んでいました.

S:なるほど、いきなり専攻を変えたのではなく、ある程度の基盤があってからのステップアップですね。大学院の研究科が変わったため、たぶん様々面で大変と感じたところもあるかと思います。研究科のチェンジについては、ご自身はどのようにカバーしていますか。例えば、基礎のコースもとっていますか。

K:はい。コンピュータサイエンスの学部生向けの授業(OS・計算論・アルゴリズム)をとっています.私の場合は学部生の時にそれらの授業をとったことがなかったので,修了要件としてとる必要があります.コンピュータサイエンスの基礎となる科目とはいえ,内容は専門的でなかなか手ごたえがあります.

S:基礎コースも習得できるのは、良いことですね。大変な面もありますが、学んだ知識は自分のものですから、将来はきっとお役に立てると思います。科技大留学を検討中の一部の学生も、執行さんと同じく文系の学部にいましたが、学びの内容が何方かと言えば工学系に近いので、大学院進学を機会に工学領域に変更したいそうです。こういう専攻チェンジを進めるには、何か留意点がありますか。あるいは準備の段階でよく調べておいたほうが良いと思うところがありますか。執行さんご自身の経験に基づいてシェアしていただければ結構です。

K:準備の段階で気をつけておくべきことは,必要になりそうな数学の基礎を身につけておくことです.研究ではあまり数学を使わないのだとしても,修了要件によって履修する必要のある授業で数学の知識が求められることがあります.私の場合,今はアルゴリズムと機械学習の授業をとっているのですが,関連する数学の基本知識は前提として授業が進められています.正直,数学が全く分からない状態では授業について行くことはできないでしょう.コンピュータサイエンスの研究科に進学するのであれば,文系の高校数学と微分・線形代数の基礎はある程度理解しておく必要があります.

S:なるほど、よくわかりました。

ちょっと科技大のことに戻って、Doctorコースの学びの場として科技大工学院を選んだ主な理由は何でしょうか。

K:入学を申し込むまでは色々と迷うこともあったので,何か決定的な理由があったわけではありません.何回か考えが変わったあと,最終的にはせっかく海外で留学するチャンスがあるのだから挑戦してみようという気持ちになりました.数年前に香港科技大に短期留学をしていたことも1つの理由だと思います.後付けにはなりますが,奨学金や大学の寮に住めるなど,生活面での心配がないことも挙げられます.

S:実際に科技大に入ったら、勉強の量が半端ないと前伺いました(笑)。量が多いというのは、授業が多いですが、それとも調査や報告書の方でしょうか。ほかの学生との共同プロジェクトもありますか。

K:私の場合,今は授業に多くの時間を割かれています.受講しているのは3つの授業ですが,それぞれ一コマ80分が週に2回あります.その合間に自分の研究を進めていますが,なかなか時間が取れないのが現状です.それとは別に,他の学生と一緒に共同プロジェクトにも参加しています.

S:確かにものすごく充実していますね。勉強の量が多くてバタバタしている中、勉強のスタイルについて自分が一番感じた日本の大学との違いは、どういうところでしょうか。

K:個人的には,授業の数は比較的少ない代わりに内容がより専門的だと感じます.授業を一度聞いただけでは理解できない場合もあるので,何回も授業動画を見直すこともあります.授業の課題や試験は真面目に取り組まないと良い評価につながりません.

S:海外の大学院では、学生が自分の授業や研究だけでなく、所属のグループの共同プロジェクトにもよく参加し、場合によって仕事をしているような雰囲気もあると言われています。執行さんの場合は同じでしょうか。

K:私の場合はまだ本格的に共同プロジェクトに参加していないので詳しくは分からないですが,大学や民間企業などから資金をもらって研究をするプロジェクトもあるようです.その場合は相応の成果が求められるので,まさに仕事という感じだと思います.

S:共同作業も学びの一環のようですね。自分のスケジュールのみならず、グループのスケジュールも守らないと、ということですね。

ところで、かなり勉強になった実感がしたのは、どういうところでしょうか。勉強になった部分(英語力を含めて)は、将来自分のキャリアアップにおいて、どのように繋がると思いますか。あるいは期待とか。

K:今までのところ授業でかなりの勉強が必要なので,週末も含めてほぼ毎日学び続けています.何度も復習しているうちに授業でわからなかった概念や問題を理解できた時は,知識が身についたという達成感が感じられます.英語に関しては日常的に必要なので,勉強しているという感覚はないですね.入学前と比べると英語を話す抵抗感がかなり減って,ほぼ自然に使えるようになっています.

S:なるほど、そういうところに勉強した甲斐を感じていますね。少し遡って、日本の大学の頃と比べて勉強の量が多いし求められる「成果」の質も高いそうなので、最初はちょっとの挫折もしましたか。自分なりにどのように工夫していますか、例えば時間の管理や勉強の仕方を変えてみたとか。

K:授業の内容が理解できなくて,もうついていけないんじゃないかと思うことは今でもあります.それでも前に進むしかないので,分かるまで何度も復習するようにしています.時間管理や勉強方法といったテクニックも大事ですが,それ以前に体調をしっかり管理して脳がきちんと働くようにすることがとても重要だと日々感じています.ずっと研究室にこもっていると気分も落ち込んでくるので,定期的にジョギングや筋トレなどの運動をするようにしています.他には集中力と睡眠の質を上げるために,夜にはなるべく研究室にスマホやPCを置いて寮の部屋に帰るといった工夫をしています.

S:よく科技大留学を検討中の学生から聞いたのですが、香港の大学は授業が英語で、先生とほかの学生とのコミュニケーションも主に英語、そして宿題やレポートなども基本英語なので、こんな英語だらけの勉強の環境では、本当に自分が対応できるかなと。執行さんの場合は、英語だらけの学び環境では、どういう風に英語を克服していますか。専門の学びといえば、たぶん英語の専門用語も多いと思います。少し心得を具体的にシェアしていただくと嬉しいです。

K:普段英語を使わない生活をしていると,そのように不安を感じることは当然だと思います.でも言語は本来生活の中で覚えていくもので,英語を使わざるを得ない環境に長い間いれば,それが自然になります.逆にいえばそうした環境に身を置かなければ,英語をコミュニケーションの手段として習得するのはかなり難しいと思います.今言語に関して不安を感じているのは今まで英語を使う環境にいなかったからなので,思い切って新しい環境に飛び込むしかないですね.別に発音や文法をネイティブスピーカーのようなレベルにする必要はありません.英語の専門用語に関しては授業で学んだり,論文をたくさん読んだりしているうちに覚えるので心配は入りません.

S:いろいろとシェアしてくださって、ありがとうございます。最後に、科技大のDoctorコース(MSc)を検討中の日本人学生に対して、とくに日本の大学と科技大との勉強スタイルの違い、その学びが将来キャリアにつながる視点から、科技大留学が自分に合うかどうかをこのように検討したらいいかもしれない、みたいなアドバイスをいただけると、助かります。多くの日本人学生にとって良い参考になると思います。

K:私の印象としては授業をこなすことがわりと大変なので,互換できる単位は留学前に調べて日本の大学でとっておくことをお勧めします.大学院での学びは専門性を深めることができるので,分野によっては将来のキャリアに繋げられる可能性が大きいでしょう.科技大では修了要件としてキャリア形成に関するセミナーもいくつか受講できますし,イベントして企業の説明会などもよく開催されています.入学後にそうした機会を使ってじっくり自分のキャリアについて考えてみるのも良いと思います.科技大のWebサイトや交流会などのセミナーで情報収集した後,最後の決め手になるのはComfort Zoneを飛び出す勇気だと思います.留学をすると楽しいことばりではなく,大変なこともあるのは確かです.でも全ての経験が自分にとってプラスになると日々感じているので,ただ漠然と不安だからという理由で留学を諦めるのはもったいないと思います.

S:今回のインタビューも、どうもありがとうございました。たいへん良い参考になりました。

香港科技大学工学院Doctorコースの紹介(英語)
https://seng.ust.hk/academics/research-postgraduate/mphil-phd-programs

お問い合わせ(英語)
sengrpg@ust.hk

給付型奨学金などについて
https://hkustengineeringjp.org/hkust-scholarship/

科技大留学の相談窓口(日本語)
info@hkustengineeringjp.org
contact@axccgb.com

#インタビュー #海外大学院 #博士課程 #学び体験 #香港科技大学工学院 #hkust #hkustengineering