大学院留学なら、MScとMBAのどちらが良いか

MBA or MSc

大学院留学におけるMScとMBAの選択の前に

大学院留学の際、皆さんはMScとMBAのどちらを選びましたか。

最近理工系とビジネス系の学生たちから相談があって、海外留学でマスターの学位を取得したいが、MScとMBAのどちらが良いか、アドバイスをもらいたいとの内容でした。

MScって何? よく耳に入っているMBAって何? 一先ずこの二つの学位を理解することから始めましょう。

MScとMBAは専門職学位

MScとMBAはマスターとはいえ、日本の大学院にある修士号とはちょっと異なるところがあります。
MScはMaster of Scienceの略称で、一方MBAはMaster of Business and Administrationの略称となっています。海外ではMScとMBAの学位認定にコースワークのみで修士論文提出が不要になっている大学が多いです。日本における一般的な修士号は博士課程前期課程を修了し修士論文が通ってからもらう学位で、博士課程を前提にするため、研究と論文提出が必須となっています。MScとMBAはそれとは異なるため、日本の言い方だと専門職学位のような感じです。一方、日本の修士号と同等の学位は、海外の場合MPhil(Master of Philosophy)と呼ばれることが多く、研究・成果発表・論文提出が必須となっています。MPhilが日本の一般的な修士号のようなもので理解していただければ良いでしょう。日本でも、最近文部科学省による専門職大学院制度の新設によって、多くの大学のマスターコースにコースワークのみ(論文程度ではない報告書提出が条件付き)で取得できるキャリアアップ型の修士号が用意されるようになり、世界と一致するようになってきています。

専門職学位を持ってドクターコース進学までいけるか

専門職大学院ということで、MScとMBAは研究というより学びに焦点を当てたマスターコースです。わかりやすくいえば、キャリアアップ・スキルアップのためのコースという風に理解して良いでしょう。日本ではキャリアアップ型の修士号を持って博士課程後期課程(ドクターコース)に進学できない大学もありますが、海外の場合はできる大学の多いようです。MScまたはMBAだけを取得するにとどまらず将来を見据えてドクターコースまでいくかもしれないと思うなら、一度大学の方にお問い合わせなさることがお勧めです。

MScは理工系学生向け、MBAはビジネス系学生向け、には限らない

よく学生から聞かれる話ですが、大学生の頃は理学部なので、大学院留学の場合MBAコースに進学できますか。僕は経営学部出身だからMScは無理でしょと。実際に進学可能かどうかは、専門によって異なります。コースの入学条件を細かく理解することがお勧めです。

MScは理工系学生限定ではありません。例えば、こちらのグループが支援している香港科技大学工学院(日本でいうと大学院工学研究科)の一部のMScコースは文系の学生も申し込みが可能です。詳細は下記の投稿をご覧ください。
↓香港科技大学工学院のビジネスとテクノロジーを融合したプログラム(理転参考)
https://hkustengineeringjp.org/hkust-fintech-eem-intro/

同様にMBAはビジネス系学生のみが入学できることを前提にしていません。理学・工学・社会学・商学・文学、ほぼ全ての学部出身の学生でも入学することが可能です。

ところが、MScもMBAも出身の学部が問わなくても専門的なバックグラウンドは問われます。例えば、香港科技大学工学院のFinTech(Master of Science in Financial Technology)はデータ分析や機械学習の内容が多いため、数学力が問われるGREまたはGMATの成績が重要となります。EEM(Master of Science in Engineering, Enterprise and Management)はFinTechほどのGRE/GMATの成績が問われないが、インターンシップや職場などでビジネスの経験を積んだ学生が有利になります。MBAも同じくビジネス背景を持った学生が事前審査と入試合格に有利です。

キャリアを見据えて選びましょう

MScとMBAは専門職大学院コースなので、学部入学とは違ってよりキャリアを見据えて選択することがお勧めです。興味のある分野を考えることがもちろん大事ですが、自分がどのような内容の仕事をしたい、どういう職種で活躍したい、自分なりのキャリアパスをどう作っていきたいか、予め考えておくことにしましょう。

例えば、経営学部出身だが技術に大変興味を持ち、経営というよりは技術的な課題解決を担うエンジニアとしてやっていきたい。実際にインターンシップや仕事で経験していくうちにだんだんそういう思いが強くなってきました。こういう場合は、MScを取得することがお勧めです。
一つ大事なことがあります。経営を担う仕事とポジションにはビジネス系の学位を持つことが有利だが理工系の学位でも可能です。逆に、エンジニアとして活躍する場合、基本理工系とくに工学系の学位が必須となることが多いです。

ところで、もし経験していくうちに理工系だけの学位では足りず、キャリアップにはやはりビジネス系の学位が必要と思ったら、MBA取得がお勧めです。とくに将来を見据えて、学位だけでなくビジネス分野の知識と人脈も重要と考えたら、MBAは良いステップアップになるかもしれません。

給付型奨学金の獲得も含めて考えましょう

給付型奨学金の獲得は結構よく見落とされるところです。もちろんほとんどの学生は給付型奨学金が必要と思って獲得する意識を強くしています。一方で、同じ大学でもMScとMBAは給付型奨学金獲得の難易度が異なることがあります。実際に給付型奨学金獲得は学生自身の成績だけでなく、申し込む学生の数、つまり希望入学者の競争によってだいぶ異なります。

こちらのグループで支援している香港科技大学留学を例に説明します。香港科技大学はアジアTOP5の大学で基本的に世界各国からの希望入学者が多いです。科技大のMBAコース(とくにEMBA)は最近の10年間ほぼアジアTOPと評価され、おそらく希望入学者が科技大のなかで最も多いかもしれません。Googleにおいて日本語で香港科技大学留学というキーワードを検索してみると、ほとんどMBAコースの紹介や経験シェアが上位になっています。ところで、同じ科技大の大学院として工学院はアジアで高評価されている一方、MScコースはいまだに日本でよく知られていないようなので、現時点では日本人学生の希望入学者が少ないことが想定されます。実際に科技大工学院の日本人OB/OGに聞くと、確かに今は日本人学生が少ないです。競争があまり激しくないなか、多くの科技大工学院に入学した日本人学生は給付型奨学金を持っています。

給付型奨学金獲得のしやすさも、MScかMBAかの検討要素として入れておくと良いかもしれません。

以上、大学院留学におけるMScとMBAの選択について学生たちの相談に応じた内容を共有しました。皆さんの海外留学の検討に良い参考になれば、うれしく思います。

About us

私たちは日本人学生の香港科技大学留学を支援したい有志たちのグループです。メンバーには香港科技大学留学中(とくに工学院)の日本人学生、香港科技大学の留学を修了したOB/OG、日本の国立大学で国際交流・留学サポートを担当している先輩がいます。
私たちの経験とともに、給付型奨学金・コース・コロナの対応などの情報をまとめてアップしています。
↓香港科技大学工学院日本人留学特別支援サイト
https://hkustengineeringjp.org/

科技大在学中の学生やOB/OGとの交流ができるように、定期的にZoom留学交流会を開催します。詳細は本サイトのブログとともに、SNSのほうも発信します。最新情報がご希望の場合、遠慮なく私たちのSNSにもフォローしてください。
https://hkustengineeringjp.org/hkust-seng-follow-us/